テレワーク施設棟は元は築120年の診療所として利用されてきた古民家であり、地域の人々にとって、この建築は隣接する境内の森や眼下に望む海と同じ、この地にあった風景そのものでした。

改修にあたって拠り所としたのは、こうした風景のドラスティックな変化ではなく、『室内の土間を介して東西南北の「庭」の表裏をなくす』・『天井を撤去し、光と空気を循環させる』・『土壁や瓦、古い建具に迎合しない仕上で補修する』ことで、「つくる」のではなく、状態を「変える」ことによる、新たに与えられた用途と、取り巻く環境との適正化でした。

こうしてもたらされた新たな風景が、地域の文化を可視化するシンボル（象徴）として利用され、世代や属性を超えて人々をつなぐきっかけとなることを期待しています。